X線天文衛星「ひとみ」はなぜ失敗したか(2) 引き継ぎ不足が招いた運用ミス | sorae.jp : 宇宙(そら)へのポータルサイト

「ひとつは、パラメータも計算ツールが算出した数値は、算出結果がプラスであってもマイナスであっても「ひとみ」に書き込むときにはプラスにしなければならない、という重要なことが引き継がれていなかったことだ。たとえば「3,-5,2」という数値だったら「3,5,2」と入力しろというのだ。これは、言われなければわかるはずがないだろう。実際に作業した担当者は、そのことを知らずにそのまま入力してしまった・・・もうひとつは、運用支援業者によるシミュレーションが不充分だったことだ。シミュレーションをしていれば「ひとみ」に送信する前に気付いていたはずだが、このパラメータ変更作業の手順書が不充分だった。運用支援業者は口頭指示で作業を行い、ミスに気付かなかった。 姿勢制御システムのパラメータ設定は、打ち上げ前とEOB伸展後ぐらいしか行わない。何度も繰り返し行う作業なら丁寧に作業手順書を作ったり、「マイナスの数値はプラスに直せ」などという単純なルールであれば入力ミスを検知してエラー返すようなソフトを作っておくだろう。しかし1回しかしない作業では、そこまで手を掛けるのが億劫なのもわからないでもない。だが、このたった1回の作業を明確に文書化しておかなかったことが、「ひとみ」の最後の安全策だったはずのセーフホールドモードを失敗させてしまった。 これらのミスは運用支援業者によるミスだが、作業の重要性を考えるとJAXAから作業手順の確認や文書化の指示といった管理が不足していたと言わざるを得ないだろう」らしい。